2016年6月26日日曜日

CSV(Creating Shared Value)って何なの?(その②)

前回、CSVの定義とは、
「企業がその本業を通じ、社会課題に貢献しながらしっかりと経済的利益も得て、社会価値と経済価値を共創する」
ことであり、言い換えると、
「自社を差別化して収益を最大化するための、競争のための経営戦略」
である、という話をしました。


これを実現していくための手段をポーター教授は3つ提唱しています。
① 次世代の製品・サービスの創造
② バリューチェーン全体の生産性の改善
③ 地域生態系の構築


①は最も分かりやすいと思います。要は、社会課題の解決に役立つ次世代の「製品・サービス」を創り出すことです。トヨタのプリウスなどが、よくその代表例で挙げられます。最近知った例では、DG TAKANOさんが開発した超節水ノズルBubble90など、素晴らしい製品だと思います。独自の真空技術で水泡を作り、水滴を丸くすることにより、平均節水率90%を達成しているそうです。水不足は近い将来、世界の深刻なリスクとなります。この技術は、社会課題に明らかに貢献できます。

水不足は深刻な課題です










②は、製品やサービスだけではなく、自社の「バリューチェーン全体」を見て価値を生み出していきましょう、ということです。これって、何だか分かったような、分からないような話ですよね?例をあげると、ウォルマートは、配送ルートの見直しと包装の削減を実施し、環境への配慮と同時に経費削減に繋げています。さらに、サステナブルな商品規準まで作り、それをサプライヤーにも課しています。これは、ルールメイキングによる差別化とも言えます。

ついでに、③の「地域生態系の構築」も説明します。これって、さらに意味わからないですよね?要は、ビジネスを支える「環境」を整備しましょう、ということです。例をあげると、マイクロソフトは、コミュニティカレッジでのIT教育支援を通じ、優秀な人材の確保も狙っています。またグローバルヘルスケア企業のノボノルディスクは、中国市場への参入に先駆けて啓発活動を行い、中国で糖尿病市場を作り出すと同時に、先行ポジションを確立しました。


しかし、例をあげといて言うのもなんですが、②と③っていまいち良く分からないですよね?正直私も、これらの分類、よく分かりません。でも、以下のように考えるとスッキリします。

製品・サービス + バリューチェーン + 地域生態系(ビジネス環境)= 事業に係る全て

つまりは、個人的な結論としては、
『3つに分類する意味なんてないやん!!』
ということです。ここまで延々書いといてなんですが、
『分類など気にせず、自社のビジネスに係るどっかで、社会課題に貢献しながら経済的利益もしっかりと得られれば、それでOK!』
と考えています。続きは次回。

細かい事など気にせず、いざ勝負勝負!











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2016年6月19日日曜日

CSV(Creating Shared Value)って何なの?(その①)

前回「CSVという言葉にこだわりすぎることに益なし」という考えについて書きました。
では、CSVって一体何なんでしょう?今回は、それについて、私なりの解釈も踏まえて解説してみたいと思います。

まず、マイケルE. ポーター教授本人は、何と言っているのでしょう。一番確実な手段は、オリジナルにあたってみることです。


この号に「Creating Shared Value(共通価値の戦略)」として論文が掲載されています。さらに、もっと詳しく知りたければ、2008年1月号に「Strategy and Society(競争優位のCSR戦略)」として、もっと元祖の論文も掲載されています。が、「こんなん読んどる時間などないわ!!」という方向けに、以下で簡単に解説してみたいと思います。

まず以下が、CSVについて説明されるときに、一般的に良く引用される図です。これは、「共通価値の戦略」の論文のなかに出てきます。






















が、引用しといてなんなんですが、正直、これ読んでもモヤッとしていて、いまいち理解できませんよね?そもそもCSRのほうの定義自体も、どんどん変化していっています。ポーター教授がここに整理してくれているCSRの解釈自体、本当にそうなんでしょうか?個人的には、かなり懐疑的です。

ということで、以下では、私の頭の中での勝手な解釈について記載していきます。

まず、CSVとは、
「企業がその本業を通じ、社会課題に貢献しながらしっかりと経済的利益も得て、社会価値と経済価値を共創する」
という定義になります。なので、「Shared ValueのCreating」なのです。それ自体は、別に何ら真新しい考えでもなく、「三方よし」をベースとする日本では普通なことのように思われます。

しかし、忘れてはならないのは、ポーター教授は『競争戦略』の大家だということです。

つまり、ポーター教授の提唱するCSVの主眼は、あくまで自社にとっての収益機会を最大化することです。「社会課題を次のメシの種にしよう」ということです。言い換えると、
「自社を差別化して収益を最大化するための、競争のための経営戦略」
ということになります。別にこの考え方自体はいいのですが、これをCSRと対比しているところに問題があるように思います。

次回は、CSVの定義について、さらに考えていきます。










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2016年6月12日日曜日

押さえとく必要は特になし...「CSV(Creating Shared Value)」

突然ですが、CSVという言葉があります。

CSVと言っても、テキスト形式のファイルのことではありません。「Creating Shared Value」の略で、CSVとなります。

この言葉は、診断士なら誰もが知っている「5フォース分析」や「バリューチェーン」等、数々の競争手法戦略を提唱したマイケル・ポーター教授が、2006年のハーバードビジネスレビュー誌の論文で提唱した経営戦略のフレームワークです。「企業による経済利益活動と社会課題の解決を両立させる」ことを提唱しています。

ちなみに、診断士のバイブル「中小企業白書」にもCSVは出てきています。2014年版の第3部第5章第3節に「社会価値と企業価値の両立」とあります。ただ、何故か最終的に「CRSV(Creating and Realizing Shared Value)」という独自の言葉に置き換えられていますが...。中小企業庁のプライドでしょうか?

この言葉、国内の一部では、流行り言葉のようになっています。2015年1月号のハーバードビジネスレビューでも「CSV経営」が特集されました。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2015年1/01号 [雑誌]
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が、本家のHarvard Business Reviewの1月号の特集は、もちろんCSVではありません(「The Problem With Authenticity」です)。そもそもCSVで騒いでいる国自体が、世界でも韓国と日本くらいではないか、と聞いたこともあります。それって何故でしょうか?

また一方で、私がここまでずっと提唱してきたのは、企業による「本業を通じた社会的価値と経済的価値の同時創造」です。

これってCSVのことでしょうか?

そうであって、そうではありません。基本的な考え方がほぼ同じであることは、そのとおりだと思います。しかし、ポーター教授は「CSVはCSRとは非なるもの」と主張されています。その点で、私の考え方とは違います。それに、本家のCSVのロジック自体、不明確だと個人的には思っています。

ポーター教授の提唱されているCSVのロジックは、つまりは「競争戦略のフレームワーク」です。一方で、この考え自体、別にポーター教授のオリジナルではありません(それ故、欧州などではそれほど注目も集めていません)。ネスレが元祖、と言われています(但し、彼らは「進化したCSR」と表現しています)。

個人的には、CSVという言葉にこだわりすぎることには益なし、と考えています。私の考える大切なもの、つまりは日本企業がDNAとして有する大切なもの、を見えなくさせてしまうのではないでしょうか?次回以降は、このCSVについて、私なりの解釈を書いていこうと思います。

大切なものが見えなくなります













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2016年6月4日土曜日

押さえといて損はなし「持続可能な開発目標(SDGs)」

さて、前回まで「本業を通じた社会価値と経済価値の同時創造」ついて書いてきました。
そのための一連のステップのスタートこそ「自社が求められるニーズを探る」ことでした。

そしてそのためには、社会にある課題を広く把握すること、社会からのニーズを捉えることが必要です。さらに、そのために使えるツールの一つとして、国連が昨年策定した「持続可能な開発目標(SDGs)」を紹介しました。

このSDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、2015年9月の国連総会で採択された、先進国にも途上国にも等しく適用されるユニバーサルな目標・ターゲットです。今地球が抱える課題が、17の目標と169のターゲットという形で整理されており、2030年の世界に向けたコミットメントと言えます。

国連広報センター作成















例えば、目標の1つ目は「貧困をなくす」、4つ目は「質の高い教育」、11個目は「持続可能なまちづくり」、13個目は「気候変動へのアクション」、等々。以前にも紹介しましたが、この目標・ターゲットの解説は、以下の冊子のものが大変分かりやすいです。
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/pdf/sdgs_child_friendly.pdf

また、世界最大級のプロフェッショナルサービスファームであるPwCが、企業や市民に対して実施した調査もあります。それによると、企業は「ディセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と経済成長」「産業、技術革新、社会基盤」「持続可能な消費と生産」「気候変動へのアクション」といったSDGsの目標を、自社の "機会" と捉えています。が、これって当たり前では?機会も何も、これらの項目はもはや企業にとって義務ではないでしょうか?

一方で、企業にとって、「格差の是正」「貧困をなくす」「飢餓をなくす」「持続可能なまちづくり」「海洋資源」などの目標は、 "無視される可能性が高い" という結果も出ています。裏を返せば、これらの課題に本業を通じて貢献する(自社の経済的利益も上げながら貢献する)ことを宣言すれば、差別化できる可能性も高くなるのではないでしょうか?

また、この調査では、「企業がSDGsの目標に取り組むことを重要と考えるか」について、市民に対しても聞いています。「非常に重要」と回答した割合は日本では30%でしたが、英国やドイツでは60%以上となっています。さらに、マレーシアでは70%、アルゼンチンではなんと80%にも上っています。社会課題の存在を無視できない国ほど、国民の企業に対する期待も大きくなってきていると言えます。

現在国連では、SDGsの各目標についての計測可能な指標を検討中と聞いています。それらが今後開示されれば、各企業が掲げる"大義" をより具体化していくうえで、大きな助けとなると考えます。

SDGsの採択を祝う国連ビル















このSDGsは今後も益々グローバルに注目を集めてきますので、是非「会社の大きなビジョン」を検討するに際し、いち早く取り込んでみることをお勧めします。


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