2016年3月27日日曜日

どえらい(D)町(M)興し(O)と覚えよう

前回は、地方創生の主体たる組織=DMO(Destination Marketing / Management Organization)について書きました。これ、最近日本でも注目されています。

さらに、このDMOの重要ポイントその①として、
官民協同の異質な人たちが集まった組織である
ことをあげました。これにより「多様性」が確保され、価値の「創造」と「分配」が結びつけられ、「イノベーション」と「永続性」が生み出されます。いずれも、社会課題の解決には不可欠なものです。


そして、本日はDMOの重要ポイントその②。それは、
顧客、効果、体制まで、徹底的に見える化する』です。

・どんな観光客が訪れているのか、個々の顔を見えるようにする。
・観光における地域への経済効果を数値化する。
・組織における権限や責任、成果評価等を明確にする。

観光の経済効果といえば、「観光収入の増加」や「雇用の創出」があげられます。日本における行政の施策は、費用対効果が極めて不明確なものばかりです。しかし、多少乱暴に言ってしまえば、地方創生の目的は一つなはず。
その地方に、「継続的に」「お金が落ちる」ようにする、ことです。
単発イベントで一度だけ人が集まっても(お金を落としても)、あまり意味はないと思います。観光客が増えても、その人たちがほとんどお金を落とさなければ、やはりあまり意味はないと思います。継続的にお金を落としてもらえるシステムをいかに作り上げるか、それが地方創生の至上命題なはずです。その意味で、経済効果を数値化し、チェックしていくことは必須だと思います。

例えば、オーストラリアの観光局が設定している指標を3つほど見てみましょう(他にももっとありますが)。
・宿泊客による支出額(および、そのうちの戦略市場の宿泊客による支出額)
・戦略市場の宿泊客による1回の旅行あたりの支出額
・戦略市場の宿泊客による1泊あたりの支出額
まさに、こうした指標を見ていく必要があるということです。さらにここには、「戦略市場」という言葉が出てきています。ここから、個々の観光客の顔(様々な特徴)を見える化し、ターゲット層も明確にしていることが分かります。まさにマーケティングの世界です。


ここから、DMOの重要ポイントその③にも繋がってきます。それは、
自主財源である』ということです。

これも非常に重要なポイントです。自治体からの助成金に頼っていては成功しない、ということです。この発想は、地方創生=助成金、という図式が一般化してしまっている日本の常識とはズレています。しかし、自主財源だからこそ、そこに必死さが生まれます。制約条件があるからこそ、そこに知恵が生まれます。だからこそ、ここでも経済効果の数値化がやはり必要なのです。

では、自主財源とは何でしょう?

例えば、バルセロナの観光局の例では、観光局がMICE(Meeting、Incentive、ConferenceまたはConvention、ExhibitionまたはEvent)を誘致した場合には、提携した会員ホテルから誘致経費として、宿泊料の何%かが支払われる仕組みになっているそうです。他にも、観光商品の販売などで収入を得ているDMOもあるようです。


やはり鍵は、行政主導ではない、ということです。個人的には純民間による主導が一番だと思っていますが、今迄述べてきたような官民協同のDMOが日本でも本格的に活動してくれば、地方創生に一定度の役割は果たしてくれるように思います。


そういえば9年前にバルセロナ行きました



















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2016年3月21日月曜日

地方創生の主体たるDMO

前回は、我が故郷岡山県のPRポスターについての話を書きました。
今も毎朝、JR新橋駅でそのポスターを目にします。
そしていつも思います。「もったいない.......」と。

ずっと地方創生への想いについて綴ってきました。
今回は地方創生を進める主体についての話。ここで、最近良く耳にするのがDMO(Destination Marketing / Management Organization)です。

DMOとは、地域をひとつの集客装置とみたて、観光集客の推進を目的とするプラットフォーム。要は、マーケティングを目的として、その地域の観光マネジメントを一本化する、ということです。

この組織における重要なポイントは、まずは
官民協同の異質な人たちが集まった組織である
ということ。色々な点で、これには大きな意味があります。

まず、イノベーションに不可欠な要素である「多様性」が確保されます。
民間企業の知恵、NPO/NGOの問題意識、行政のネットワーク、観光とは無縁だった地域住民の自由な意見、そうしたものが組み合わさることで、イノベーションは生み出されます。

更に、課題の解決に不可欠な価値の「創造」機能と「分配」機能が結びつけられます。
かのマイケル・ポーターも言っていました。NPO/NGOや行政は「価値の分配」が役割です。従って、問題の特定は出来ても、真の意味での解決までは実現出来ません。真の解決のために、「価値の創造」が出来る主体の関与が必要です。そして、それこそが企業の力です。さらに、地域住民も自分事として関わるようにならなければ、真の地方創生は達成できません。

話が少し逸れますが、以前に国連で働いていたというある方からも聞きました。(一気にグローバルな話になりますが、)深刻な課題を抱える国に行き、国連はその課題を解決しようとします。しかし、解決に向けた芽までは出せても、花までは咲かせられない(真の解決までには至らない)そうです。逆に言えば、国連が芽までは出してくれているので、その芽は企業にとって大きなビジネスチャンスだ、と。

価値を生み出す=お金を稼ぐシステムを確立することで始めて、活動の永続性は担保されます。課題の解決には時間がかかります。重要な社会課題ほどそうです。つまり永続性は、課題解決に不可欠ということです。そして、そうした稼ぐシステムを確立すること=民間企業の存在意義です。しかし、そんなに簡単にシステムが確立できるようなら、そもそも社会課題になってなどいません。従って、そこにはイノベーションも不可欠になってきます。だから「多様性」なのです。

DMOの重要ポイントの一点目だけで、紙幅を費やしました。重要ポイントの二点目は、
顧客、効果、体制まで、徹底的に見える化する
ことです。が、長くなったので、ここはまた次回。


岡山県牛窓の美しい風景
















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2016年3月13日日曜日

もったいない岡山県

番外編です。

地方創生の話を再三にわたって書いている矢先。
新橋駅にて、我が愛すべき故郷である岡山県のPRポスターを大量に目にしました。

その名も「もんげー岡山」。
気合いの入らない桃太郎のアップ画像のポスターと、文字だけのピンクのポスター。
文字だけのほうは「きびだんご買い放題」とか、なんとかかんとか。

【もんげー岡山!】岡山県PRサイトより











以前から「もんげー岡山」というPRをしていることは知っていました。
が、どうなんでしょう?これって効果出てるんでしょうか?

まず「もんげー」と言うのは、妖怪ウォッチに出てくる愛されキャラ、コマサんとコマじろうの口癖です。そう、子ども向けアニメです。私は小さい子どもがいるので知っていますが、子どもがいない人は恐らく「もんげー」の意味すら分からないのでは?

と言うことは、このPRは家族向け?

でも、妖怪ウォッチ人気に便乗している割に、そこにコマサんはいない。
写っているのは、何だかよく知らない人(桃太郎?)だけ。中途半端感120%です。
※ 調べたら、前野朋哉という岡山県出身の俳優さんだそうです。

さらに、岡山県の何がもんげー(すごいの意味)のか、ポスターを見てもさっぱり分かりません。なんせ、桃太郎の写真と文字しかないので.....。観光PRと言うのはやはり、その土地の価値を伝えてなんぼ、だと思うのですが。
※ その意味では「そうだ京都、行こう。」のキャンペーン広告は、秀逸だと思います。

©JR東海「そうだ 京都、行こう。」


















そもそも何がもんげーかを語ってすらいないので、誰がターゲットなのかもさっぱり分かりませんでした。変わった広告で目にはつくけれど、恐らく実質的な効果はほとんど生まない、広告会社が好んで作りたがる典型的広告な気がします。折角お金をかける訳ですから、ターゲットを明確にし、そこに効果的な価値を伝える、というマーケティングの基本を考えて欲しかったです。

我が故郷である岡山県の素晴らしさを良く知っているからこそ、「もったいない!!」と心の底から思った次第です。

・同じ県の中に牛窓のような海の綺麗な場所もあれば、蒜山のように山の綺麗な場所もある。
・岡山城に後楽園、雲海に浮かぶ備中松山城、白壁の町で有名な倉敷美観地区、桃太郎伝説ゆかりの吉備津神社や鬼城山、日本名木100選の醍醐桜、全長1200mに及ぶ鍾乳洞である井倉洞等々の名所がある。
・大原美術館では、エル・グレコの「受胎告知」やモネの「睡蓮」等の名作を鑑賞できる。
・桃やマスカットなどのフルーツも豊富で、最近は「津山ホルモンうどん」「日生カキお好み焼き」「えびめし」「蒜山やきそば」等のB級グルメでも有名。
・宮本武蔵、宇喜多秀家(とその妻の豪姫)、山田方谷等々、巷の人気も高い、岡山縁の人物もいる(何気に、かの北条早雲の出自も岡山県と言われています)。
・そして何よりも、日本で一番有名な昔話(桃太郎)の伝説を有する。

コンテンツは豊富です。気候もよく、観光地としての潜在力は高いと思っています。あとは、それをどう料理して伝えるか、です。しかし、東京にいて良く分かるのは、そもそもの岡山県(とその有する価値)の知名度の低さ。一方で、県がお金をかけているのは、価値を全く伝えていないポスター(とPR)。そこに大きなギャップを感じました。

今回のポスターの一件で改めて考えさせられました。やはり、価値の創造が出来るのは、「その土地を真に愛する民間主導の力」ではないでしょうか。


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2016年3月6日日曜日

和のディズニーランド

再三再四、脱線しました。
企業と地方創生の話に戻ります。 

繰り返しになりますが、私は官主導による地方創生は無理だと思っています。 
これは、多くの日本国民の常識とは相容れないかもしれません。 

しかし、税金を財源とするが故に、官はターゲットを絞れません。
さらに言えば、官は価値を分配するのが仕事であり、価値の創造はできません。

ターゲットを絞ったサービスを開発し、それを効果的にマーケティングする。そして価値を創造する。これこそが必要になります。
そしてこれこそまさに、企業の得意分野です。と言うか、民間企業の存在意義そのものです。

さらに言えば、地方が廃れて苦しむのは、官より民です。地方自治体とは違い、政府が助けてなどくれません。
座して待つだけでは、人口減少がそこにある未来である以上、死を意味します。自ら行動を起こして、地方に人を呼び込み、お金を落としてもらう仕組みを作るしかありません。

地方創生に企業が自主的に取り組めば、ブラント価値の向上に繋げられます。
さらに、人材の育成もできます。それも、企画・運営のできるリーダー人材です。
私が言っている地方創生は、社会貢献とは違います。企業にとっての実利を、当然ながら目的とします。

これに地元企業が主体的に関わらない理由が、私には分かりません。

これからの時代、ターゲットの不明確なハコモノや単発のイベントに意味はありません。
ターゲットを絞った持続性のあるサービスを、いくつも用意することが必要です。

ひとつの例がディズニーランドです。個人的にはほとんど行きません。が、よく出来た施設だと思います(最近は、再三の値上げと混雑で客が少し離れてるようですが)。

子どもにも、親子連れにも、メルヘン好きな女性にも、スリルを味わいたい男性にも。
それぞれが満足できる世界があり、アトラクションがあります。しかも、一つの場所で。
つまり、"ターゲットを明確にしたものを、あれもこれも揃える" ことが、日本の地方にも求められるということです。それも、民間の力で。

私の知り合いの "祭りプロデューサー" の方が、いつも言っています。
「和のディズニーランドを作りたい!!」と。
そのための場所が、その方にとっては神社であり、祭りでした。

この "和のディズニーランド" という発想こそ、地方創生のひとつの解であるように思います。
これが地方の至るところに作られていけば、地方は面白くなっていくのではないでしょうか。














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