前回は、日本企業が市民社会の攻撃を受けた事例をいくつか紹介しました。
しかし、それらは「大企業」が「海外」で攻撃を受けた事例でした。
当然ながら、疑問が浮かぶはずです。
『日本のみで事業を行っている中小企業には、こんな話関係ないよね?』
と。しかし、どうも「関係ない」とは言ってられない状況になってきているのです。
それを象徴する事例を一つ紹介します。
米国での売上が絶好調な富士重工業(スバルブランド)の事例です。
2015 ロイター/Yuka Shino |
昨年7月、米国に本社を置く国際ニュース通信社ロイターが、あるレポートを公開しました。
「スバル車ブームの裏で、看過出来ない事態が生じている。同社の生産は、アジアやアフリカからの難民申請者や安い外国人労働者に支えられている」と言うのです。
http://jp.reuters.com/article/special-report-subaru-idJPKCN0Q21H220150803
これは海外の話ではありません。群馬県太田市での話です。ロイターは太田市で実際に調査を実施し、下請け企業での彼らの過酷な労働環境を世界に向けて告発したのです。
労働力不足の日本においては、日本人が就きたがらない単純労働や重労働は、外国人の労働力に頼っています。このことは、既知の事実となっていました。
しかし、ロイターが今回告発したのは、彼らのもっと過酷な環境でした。
・母国の送り出し機関からの金銭要求(多額の借金を背負っての来日)
・日本での受け入れ先(下請け企業)による給与の不当な中間搾取(ピンハネ)
・最低賃金以下の給与
・長時間の強制的な労働
・事前通告なしの即時解雇
・労働者の保険の未加入
等々です。これらの行為は「違法」です。そして「彼ら」の身分は、技能実習生や難民申請者、不法就労者や留学生(を名目とした出稼ぎ労働者)だったりします。
2015 ロイター/Yuka Shino |
本レポートでは、国連と米国務省も日本の技能実習制度について「いまなお強制労働の状況にある」と厳しく指摘している事実を紹介しています。私も全く知らなかったのですが、どうも海外では「日本における外国人労働者の労働実態は、現代版の奴隷制度だ」との認識が広まっているようです。
一方、こうした問題に対し富士重工業は「取引先の労働環境管理は基本的に各取引先の責任で行っており、当社が直接的に関与することはない」とコメントしています。その通りです。日本企業に多い型通りの教科書的回答です。しかし、このコメントは、昨今の人権課題におけるグローバルな常識では落第点となるようです。
前回までに、取引先等における人権侵害で企業が攻撃を受け、ブランドを大きく毀損させた実例を紹介してきました。これらの企業は国際社会から、適切な影響力を取引先に対し行使することを強く求められました。翻って今回のような事例では、下請け企業に対する富士重工業の影響力は巨大なものです。そしてこうした影響力には、当然ながら「責任も伴う」というのが現在のグローバルな常識となります。
間違えてはいけないのは、外国人を雇うこと自体に問題がある訳ではありません。しかし、最低限、法に沿った適切な労働運用がなされる必要がある、ということです。労働力不足を理由に法違反を看過することはもはや許されず、これはもはや「国内問題」と片付けられない注目度を世界で集め始めています。もちろんこの問題の最大の責任を有するのは「国」です。しかし、富士重工業にも、影響力に応じた責任は負う事が求められます。責任とはつまり、取引先に是正を強く促すことであり、それでも改善を行わない場合には取引関係の打ち切りも覚悟する、ということです。
中小企業を巡る人権リスクが少しずつ見えてきました。「日本における外国人労働者の労働実態」については、海外の人権NGOなどが、今後益々注視していくことを表明しています。そして、それには理由があります。そこらへんはまた次回。
なお、本課題を知ってから、少し勉強してみようと思いこの本を読んでみました。理解を深める上で役に立つかと思います。技能実習生よりも悲惨な留学生の実態、そしてそれを是正するどころか食い物にしている政府の天下り機関の実態等々、赤裸々に綴られています。
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