2016年4月24日日曜日

社会価値と経済価値の同時創造実現のためのステップ②

本業を通じた社会的価値と経済的価値の同時創造について、前回から書き始めました。

繰り返しになりますが、私が考えるそのためのステップは以下のとおりです。
① 社会に対する感度を高く保ち、自社が社会から求められるニーズを探る。
② 優先順位を付け、自社が貢献していくニーズを決定する。
③ ②に基づき、社会視点の会社としての大きなビジョンを掲げる。
④ ③に沿って一貫した行動を全社でとる。
⑤ ビジョン達成のために、積極的に社外との連携を進める。
⑥ 情報の開示、社会とのコミュニケーションを積極的にとる。
⑦ 以上のサイクルを定期的にまわす。変化するニーズに応じ、ビジョンも微修正する。
⑧ 可能であれば、モデルケースやルールまで作ってしまう。

前回、①から③のプロセスについて少し説明しました。もう少し書きます。


【① 社会に対する感度を高く保ち、自社が社会から求められるニーズを探る】

まず、世にある社会課題を広く捉えるとともに、自社に求められるニーズについて真摯に社会の声に耳を傾けます。社会課題については、国連などの国際機関や日本政府が纏めてくれているものがある(前回参照)ので、それらが参考になります。

そのうえで、自社に対する社会の声に耳を傾けるなら、地元住民と直接対話を交わす機会を設けるのは必須でしょう。他には、自社が注力すべき社会課題にある程度目星をつけたら、その分野の有識者と対話してみることも勧めます。例えば私がいま在籍している会社ではついこの前、「地方創生」「人権」「環境」に絞って、ベンチャー企業や非営利団体の方をお招きして話を伺いました。こちらが真摯に対応さえすれば、大変建設的で、かつ勉強になる意見を頂けます。


【② 優先順位を付け、自社が貢献していくニーズを決定する】

その次の優先順位を決めるステップでは、自社視点での冷静な分析が求められます。自社の本業の強みが活かせる課題なのかということはもちろん、その課題に係る潜在的な市場規模、将来的な自社の売上やコストに及ぼす影響まで、冷静に分析しておく必要があります。この分析に絶対的な解はありません。要は、解はその企業次第、ということです。

例えば、大企業とは違って中小企業であれば、「強み」にも不足があるでしょう。しかし、それが外部(他の中小企業や非営利団体等)と手を組むことによって補えるのであれば、問題にはなりません。むしろ、どんどん連携すべきだと思います。

市場規模も、大きければ良いというものではありません。大きすぎれば、将来的な大企業の参入余地も大きくなります。荒れた土地を一生懸命耕して、やっと作物が育つようになってきたところで、大資本に全てもっていかれてしまうようなものです。中小企業にとっては、逆に市場規模は大きすぎないほうがよいでしょう。

自社の売上やコストに及ぼす影響は、まさに各社のバリューチェーン次第です。但し、ここで注意すべきは、売上のupばかりを考えないことです。コストの削減も、社会課題の解決と無理なく結びつきます。例を挙げましょう。ある食品メーカーが、「先進国の肥満問題」という社会課題の解決への注力を選んだとします。その場合に考えられる手段の一つは、自社製品の糖質カットです。では、そうした場合の自社へのメリットは?そうです、原材料費の大幅な削減です。なにせ大量の砂糖が不要になるのですから。つまりは、売上とコストの両面で、頭を柔らかくして影響を分析してみる必要があるということです。

ちなみに、このステップに抵抗を示す企業も多いかと思います。「深刻な社会課題を目の前にして自社の利益を検討するとは何事か!」と。しかし、前回も書いたとおり、深刻な社会課題の解決には長い年月を要します。数年係ってハイ終わり、という活動こそ無責任の極みです。長い年月コミットしていくのであれば、活動の前提となる利益が必須となります。仙人ではないので、霞だけ食って活動する訳にはいきません。リアルな社会課題の解決には、リアルな利益に基づく活動が必要なのです。


【③ ②に基づき、社会視点の会社としての大きなビジョンを掲げる】

ここまでのプロセスを適切に経て設定した優先課題に基づくビジョンは、社会のニーズも捉えていることから、広く人々の共感を得て、多くのファンを生み出す可能性を持ちます。そうなれば、強力なブランドを構築し、高い利益率をもたらします。

一方ここでは、人々の意識に刷り込むべく、ある程度キャッチコピーの要素も必要だと思っています。以前にお伝えした株式会社美ら地球さんの「クールな田舎をプロデュースする」、石坂産業株式会社さんの「日本をよりよい循環社会に変えていく」、等々。大変覚えやすいです。長々と文章をつらね、結局何を言いたいのかよく分からないビジョンは実に多いです。一方で、短いけれど何を言いたいのか分からないコピーも世に溢れています。「要は何をやっていくのかをキャッチーに伝えていく」工夫がなされるべきです。

そして、このビジョンにしっかりと社会課題の視点が盛り込まれていれば、このあとのステップにも大きな効果を発揮します。そこらへんは、また次回。

社会課題解決の道のりは長〜いです














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2016年4月17日日曜日

社会価値と経済価値の同時創造実現のためのステップ①

さてさて、前回の続きです。
CSRは、果たしてコストなのでしょうか?
かつて多くの企業の理解はそうでしたが、今は変わってきています。
「社会課題への貢献」と「企業自身の経済的価値の創造」は、両立するものです。

そして私の持論は、
「特に中小企業こそ、本業を通じて社会価値と経済価値の同時創造を目指すべき!」
ということです。

そのためのステップは、以下のようなものと考えます。
① 社会に対する感度を高く保ち、自社が社会から求められるニーズを探る。
② 優先順位を付け、自社が貢献していくニーズを決定する。
③ ②に基づき、社会視点の会社としての大きなビジョンを掲げる。
④ ③に沿って一貫した行動を全社でとる。
⑤ ビジョン達成のために、積極的に社外との連携を進める。
⑥ 情報の開示、社会とのコミュニケーションを積極的にとる。
⑦ 以上のサイクルを定期的にまわす。変化するニーズに応じ、ビジョンも微修正する。
⑧ 可能であれば、モデルケースやルールまで作ってしまう。


順番に説明します。
まず、①から③のプロセスが適切であれば、そのビジョンは多くの共感を得られます。
社会課題を解決していくというビジョンは、多くの人を惹き付けます。

①の時点では、社会にある課題を広く把握し、社会からのニーズを捉えることが必要です。そのためには、例えば以下のようなものが参考になります。

【国連が昨年策定した「持続可能な開発目標(SDGs)」】
SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、今地球が抱える課題を17の目標と169のターゲットという形で整理しています。
引用元:http://www.globalgoals.org/ja/



















この目標の解説は、以下の冊子が、子供向けですがすごく分かりやすいです。
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/pdf/sdgs_child_friendly.pdf
さらに、これらの目標の達成において、企業は重要なパートナーと位置づけられており、中核事業を通じて貢献することを求められています。そのために、ご丁寧にSDGsを企業の経営戦略と結びつけるための指針まで作成してくれています。
http://pub.iges.or.jp/modules/envirolib/upload/6247/attach/SDC_COMPASS_Jpn_0318_30P.pdf
このSDGsについては、またどこかで解説しようかなぁと思います。

【日本政府の補正予算の概要】
補正予算には、そのときの日本が抱える課題がよく反映されています。
例えば以下の平成27年度の補正予算を見ると、少子高齢化や地方創生など、日本が抱える課題が一目で理解できます。最低限、これだけ目を通しておくのも一つの手です。
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/sy271218/hosei271218d.pdf

【事業活動を行っている地域の住民や有識者とのダイアログ】
実際に話しを聞いてみることは、最も確実かつ有効な手段です。恐れる必要はありません。こちらがどこまでも誠実な態度で接しさえれば、相手もそれに応えてくれます。


一方で、課題とニーズを幅広く把握した後に行う②のステップにおいては、「自社の強み(技術や商品力、人材等)」は当然として、
・その社会課題の深刻さと深刻なエリア
・その社会課題の存在が自社事業に与える将来的影響
・その社会課題の解決に伴い生じる市場の規模
・その市場の先行プレイヤーの有無とその影響力
・その市場で活動する非営利のプレイヤーの存在
・その社会課題に対する活動を選択した場合に、自社の売上とコスト両面に与える影響
等々までもシビアに考えておくことが必要です。まさに、経営戦略論の世界です。この②の段階では、自社視点でのメリットも当然ながら考え抜いておく必要があるということです。

社会課題は綺麗ごとでは解決できません。綺麗ごとで解決できるならば、そもそもとっくにその課題は解決されているはずです。真に解決をはかっていくためには、数年、数十年単位での地道な活動が必要となります。そして活動に持続性を持たせるためには、当然ながら活動する組織にも持続性が求められます。持続的であるためには、利益が必要となります。寄付に頼るという理念は崇高ですが、そうした活動は不安的なものになります。やはり安定した利益をあげることは、その社会課題を解決するためにも必要なことであり、そのために②のステップが必要なのです。このことは、先に記した「SDGsコンパス」からも読み取れます。こうしたシビアな検討を経て、その会社特有のビジョンが策定されます。

そんなこんなで、長くなってしまいました。続きは次回。


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2016年4月10日日曜日

社会価値と経済価値の同時創造

これまで、地方創生について散々書いてきました。
繰り返しになりますが私の持論は「地方の民間企業は地方創生に貢献すべき」です。

それは「徳行として社会貢献すべきだ」といった理想論の話ではありません。
「企業が生き残るために必要だ」という現実的な意見です。
そして、その際に考えなければならないポイントこそが、今日以降のテーマです。
つまり、「企業活動による社会価値と経済価値の同時創造」です。

突然ですが「CSR」という言葉があります。
最近は良く聞くようになった言葉なので、ご存知な方も多いと思います。
教科書的には「Corporate Social Responsibility」の略で「企業の社会的責任」と訳されます。
でも「社会的責任」と言われても、すごくモヤッとしてますよね?

多くの経営者やビジネスマンの理解は今も、大体以下のものが多いです。
・いい商品やサービスを提供しているから、そのことで社会に貢献している。
・法令を遵守し、納税している。従って、社会に対する役割を果たしている。
・利益が出たら、まあ少しくらいは寄付でもしましょう。
こうした理解の傾向は、各種アンケート等の結果をみてみても明らかです。

もう少し進んでいる企業でも、社会的責任=「社会貢献活動」との理解に留まっています。
つまりはボランティアや植林。要は、見返りなど想定していない一連の取組みのことです。
それに加え、最近の社会的流れから、環境に配慮した事業活動を行う企業も増えてはいます。

しかしこれらは全て受け身的、あるいは経営とは直接関係のない付随的な取組みです。
極端な言い方をすれば、CSRはコスト、という発想です。

こうした考え方は、企業にとっても社会にとってものぞましくないと考えています。
あるいは、こうした考え方の企業は、これからの社会では生き残っていけないと考えます。
何故でしょうか?

もう一度「CSR」の解釈について考えてみます。最近一部では、以下とも言われています。
「Corporate Social Response Ability」、つまりは「社会のニーズに反応していく力」だと。
社会から自分達が求められていることを適切に捉え、それに応じた活動をしていくことです。
そのためには、社会のニーズの変化を捉えるアンテナを常に張っておく必要があります。
このアンテナが鈍れば、その企業は生き残れない、という考えです。

さらに海外を見てみると「Corporate Sustainability」という言葉が一般的に使われています。
これは、企業は事業活動を通して社会や環境面で価値を提供し、社会を持続可能にしていく。
一方の企業も、これによって経済価値を得るべく、長期的な企業戦略として取り組む。
つまり、企業と社会の持続可能性は両立されうる、という考え方です。

これら2つの考え方からは、以下のことが言えます。
「社会性、長期的という視点はこれからの経営戦略に不可欠」ということです。
企業が本腰を入れない限り、社会課題は益々拡大していき、解決もされません。
社会課題に本腰を入れない企業は、社会からの評価も得られず、差別化もされません。
企業と社会は、もはや一蓮托生の関係にある、ということです。

でも、社会価値と経済価値って本当に両立するものなのでしょうか?
私の答えは「YES」です。そこらへんの話を次回以降続けていきます。













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2016年4月2日土曜日

クールな田舎をプロデュース

これまで長々と地方創生について綴ってきました。

地方創生は大変難しい課題だと思います。
実際に効果を出していくためには、越えなければならないハードルがたくさんあります。

しかし一方で、考えれば考えるほど、日本の地方は可能性に溢れています。
地方創生に真剣に取り組めば、苦労と同時に、大きな喜びとやりがいも得られるはずです。

と言うことで、地方創生の話にはそろそろ一度区切りをつけようかと思います。
(と言っても、また懲りずにするとは思いますが)

最後に、私が実際にお会いしたことがあり、かつそのパワーや情熱を強く感じた方が代表を務められている会社を二つほど紹介します。

一つ目は『株式会社 美ら地球(ちゅらぼし)』です。
http://www.chura-boshi.com/

岐阜県の飛騨を本拠地とし、国内外の観光客に、日本の里山体験を提供しています。
観光客は、サイクリングやウォーキング、酒造巡り等のツアーを体験し、古民家に滞在することで、里山体験を満喫できます。
恐らく、地元の人からすれば、普段見慣れた当たり前の景色なのだと思います。しかし、それが(特に)海外から来た人たちにとっては、美しい魅力的な体験に変わるのです。
この会社のミッションは、「クールな田舎をプロデュースする」ことです。これは、日本全国の至るところで実現できる考え方だと私は思います。

飛騨の景色













二つ目は『有限会社リボーン』です。
http://reborn-japan.com/

この会社では、田植えや収穫、離島巡り、自給自足の生活体験、発酵文化の見学等々のエコツアーを企画・提供しています。
「環境学習」「健康づくり」をテーマにツアーを提供されており、「参加者同士の学び合い」「協力・恊働の体験プログラム」「訪問地域への利益還元」「環境保護」等をツアー企画時の原則として掲げられています。必要であれば、参加者への事前教育まで実施していると聞きました。
これらの考え方も、地方創生においてはまさに重要だと思います。特に「学び」を重視したアプローチは、欧米のインテリ層に日本を強くアピールしていくうえで不可欠な要素ではないでしょうか。

日本の田園風景と桜は最高です













地方創生の話にはまた触れていきたいとは思いますが、ひとまず今回で一区切り。

次回からは、「企業活動による経済価値創造と社会価値創造の両立」について少し考えてみたいと思っています。

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