2016年8月27日土曜日

オリンピックと難民問題

4年に1度の祭典、オリンピックが幕を閉じました。
今回の大会に五輪史上初の「難民選手団(10名)」が参加していたことはご存知でしょうか?














彼ら彼女らは、難民となり、母国から五輪に出場できなかった選手達です。出身国は、内戦や政情不安が続く、シリアやコンゴ、南スーダンなど。そして、この「難民選手団」のなかに、ユスラ・マルディ二さんという水泳選手がいました。彼女はシリアからの難民です。


















各種報道もされている通り、2011年から続いているシリアでの内戦は泥沼化しています。死者数は推計不可能とされており、国外への難民者は480万人とも言われています。この数字は、四国4県の全人口を足したよりも多い数です。

ユスラさんは2015年にシリアから脱出しましたが、彼女が乗った通常6人乗りのボートには、18名もの密航者が乗船していたそうです。しかし、このボートは、エンジンがすぐにストップし、エーゲ海に水没し始めました。そこで彼女がとった行動は、海に飛び込んでボートを泳いで押すことでした。実に4時間。死と隣り合わせの状況で、ギリシャのレスボス島に全員無事に到着したそうです。













欧州では「押し寄せる難民のなかにテロリストがいる。難民は来るな!!」という風潮が盛んになっています。しかし、テロの最大の犠牲者こそが、難民の人たちです。

国内での避難民も含めた世界での難民者数は、いまや6,500万人以上とも言われています。そして、その難民の半数が、子どもとも言われています。

遠い中東や欧州の他人事と捉えるのではなく、彼らに対して出来ることを我々も考える必要があります。そして、この難民問題は、他人事でもありません。

そんなことについて今後、少し書いていこうかとも思います。


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2016年8月21日日曜日

3Dプリンターとカンボジア

前回までで、CSVの話に一段落をつけました。

「CSVとCSRとは別物」という論調が昨今盛んですが、いずれにしても私個人は、その論には与しません。CSRの定義は進化しています。進化形のCSRとCSVのロジックは、ほぼ同義だと考えています。それにも係らず「別物」とか言ってしまうが故に、社内は混乱し、経営者はCSRを昔ながらの枠にとどめて軽視してしまうのです。

現に日本の多くのビジネスマンはいまだに、CSR=「ボランティア」あるいは「寄付」と考えているようです。しかし、海外ではCSRよりも一般的に「Corporate Sustainability」という言葉を使い「Sustainability経営」を押し進めています。つまりは経営戦略として、本業を通じて社会課題の解決=社会の持続可能性に貢献しながら利益をあげ、同時に会社も持続していくことを経営トップ自らが明確に意思表明しているのです。

言葉遊びは止めましょう。社会課題と自社の経営とを結びつけ、そこから浮かぶ正と負の影響を冷静に分析したうえで、ともに持続していける戦略を模索していくことが、これからの企業には求められているのです。














確かに、利益をあげながら社会課題に貢献するということは、容易なことではありません。しかし、それを助ける一つのツールとして「新しい技術」があります。

例えば、3Dプリンターです。

今盛り上がっているオリンピックが終れば、パラリンピックが始まります。そこには義手や義足を付けた選手たちが登場します。この義足、物によりますが、数十万円〜百万円以上の価格がするようです。こんなコスト、先進国の人間であれば(国の補助もあるので)負担できても、途上国の貧しい人たちにはとても無理です。

例えば、カンボジアの子どもたち。

カンボジアでは、長引く内戦の間に政府軍とポル・ポト派が手当たり次第に地雷を埋めたため、内戦後も約600万個もの地雷が残ったと言われています。さらには、ベトナム戦争時の米空軍による爆撃の影響で、多数の不発弾も残っています。

結果、今でも年平均約800人もの人たちが地雷、もしくは不発弾で被災しています。特に危険なのは子どもたちです。通学路にも地雷はいっぱい埋まっています。遊んでいて被災する子どもも沢山います。どこに埋められているのか、把握できていないのです。

不発弾の処理












もちろん地雷除去の取組みは最重要です。しかし一方で、足を失ってしまった子どもたちに歩く喜びを与えてあげる必要もあります。その意味で、3Dプリンターは大きな可能性を持っています。皆さんもご存知のとおり、3Dプリンターを使うことにより、様々なものが格安で作れるようになってきています。義手や義足の製作も進んでいるようです(以下画像)。

出典 http://www.coroflot.com











http://news.rabbitalk.com/archives/1025868574.html

















これも物によりますが、シンプルなものであれば数百円の原材料費(+3Dプリンターの初期投資)で製作できるようです。これなら途上国で格安で販売することも可能です。より多くの人たちに歩く喜びを与えられます。一方で、これなら多少の利益を上乗せしても、格安で販売していけます。両者がSustainabilityとなり得ます。

AI(人工知能)やVR(仮想現実)に代表されるような新技術が、どんどん進歩しています。AIが仕事を奪うとの論調も盛んですが、むしろこれら技術の進歩が社会課題と企業経営との関係を良い方向に変え、社会の発展に貢献してくれると信じています。


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2016年8月14日日曜日

CSVという言葉ではなく、社会課題への感度を高めればそれでOK!

「CSVって何?」っちゅう話をずっとしてきました。

繰り返します。CSVとは、
『企業がその本業を通じ、社会課題に貢献しながらしっかりと経済的利益も得て、社会価値と経済価値を共創する』ことであり『自社を差別化して収益を最大化するための、競争のための経営戦略』
のことです。

そして前回は、
『社会課題に対して積極的にビジネスとして取組む企業は、人による差別化を図っていける』
という話をしました。


ポーター教授は「CSVとCSRとは非なるもの」と主張されています。しかし、私は「非なるもの」だとは思いません。確かに、かつての「社会貢献」や「コンプライアンス」にイコールと思われていた頃のCSRとは別物でしょう。しかし、CSRもどんどん進化しています(実際、CSVの元祖のネスレは自社の活動を「進化したCSR」と呼んでいます)。

http://www.csvmedia.net/CSR/1/















・CSR活動が自社に及ぼす効果を指標でしっかりと測ろうという動きがあります。
・自社にとって経済価値も生み出すCSR活動に取り組もうという動きがあります。
・社会性という軸(CSRと経営の融合)、で自社を差別化しようという動きがあります。

つまり、ほぼ同じものを、より社会軸寄りで見ているか、より市場軸寄りで見ているか、という差だけのように思います。「進化したCSR」や「Sustainability経営」と呼ばれているものを、思いっきり競争戦略軸の観点から観れば「CSV」になるのではないでしょうか。

しかし、この程度の差であれば、使い分ける必要(CSVという言葉をあえて使う必要)も無いでしょう。むしろ、余計な混乱を社内に招くだけのように思います(実際、私が知っている企業も大いに混乱しました)。

思い切り市場の軸に寄って社会課題を見るという視点に強く抵抗感を感じる経営者が、日本企業には多いと思います。しかし、これまで当ブログで繰り返し書いてきたように、経済価値を生み出しながら続ける企業活動を主体にしてこそ、社会課題も解決されていきます。


「進化したCSR」のレベルまで経営者の意識を高めることは必要です。社員がCSRを、より経営の中心に近いものとして理解する必要があります。欧州に比べ、日本の多くの企業は、まだまだこのレベルにはありません。

「自社のビジネスは社会の役に立っている」と日本の多くの経営者は言います。しかし、そこで言う社会とは、お客様のことではないでしょうか?広く「社会」という視点がそこには欠けているように思えます。

「自社は寄付をして社会に貢献している」と日本の多くの経営者は言います。しかし、そうした寄付は義務でありコストであると意識されるため、永続性に欠けるのではないでしょうか?経済価値も同時に生み出せる活動にこそ、永続性が伴います。

日本人は高い社会性を有する、と良く言われます。であれば、その社会性をビジネスで最大限に活かしていきましょう。その余地は、まだまだ限りなく大きいです。その意味でも是非、私がこのブログで書いてきている「社会価値と経済価値の同時創造実現のためのステップ」を理解していただきたいと思います。

Good360 HPより













CSVシリーズ、長くなりました。次回は別の話題に触れていこうと思います。


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2016年8月6日土曜日

社会課題で社員が変わる

ここまで「CSVって何?」っちゅう話をしてきました。

繰り返しますが、CSVとは、
『企業がその本業を通じ、社会課題に貢献しながらしっかりと経済的利益も得て、社会価値と経済価値を共創する』ことであり『自社を差別化して収益を最大化するための、競争のための経営戦略』
のことです。

そして前回は、
『社会課題への積極的な関与が、ルールメイキングの動きへのいち早い関与にもつながり、それは企業にとっての長期的な優位ともなり得る』
という話をしました。


さらに、企業側にとってのメリットは他にもあります。まず、社員が変わります。

・多くの企業の社員は、もちろん「お客様」や「株主」への興味は持っています。しかし得てして、広く「社会」というものへの興味を欠きがちです。社員が、「社会」への強い興味を持つように変わります。

・社会課題の解決、さらにはそこからの経済価値の創造は、短期間で達成できるような容易なものではありません。従って、目の前の業務をこなすだけの短期的視点ではなく、長期的視点を社員が身につけられます。

・NGOやNPOと共に働くことにより、働き方や意識が変わります。意志決定や行動のスピードがアップします。自ら課題をみつけていく意識を持てます。とりあえずやってみる行動力が身につきます。

https://creativecommons.jp/














また、そうした社員の変化に対応するために、もしくは変化を後押しするために、企業側は「社員の評価軸」を変える必要性が生じます。

・短期業績のみで評価するのではなく、より長期で社員を評価していく必要が生じます。

・ジェネラリストを養成するのではなく、専門家を養成していく必要が生じます。

・失敗を許容し、チャレンジを奨励し、会社にとって糧となる失敗は逆に評価する必要が生じます。

http://marichanko.com/sippaiwoseikounikaeru-1743


















他にもまだまだありそうですが、少し考えただけでも、社員に与える影響(変化)をこんなに思いつきます。

企業は社員によって成り立っています。企業とは人の集まりです。企業は、人が集まることによって大きな力を持ちます。社員の意識が変わり、社員を評価するシステムが変われば、会社自体が大きく変わっていきます。

ここまで述べてきたような "わくわく" しながら働ける社員がいて、"わくわく"をしっかり評価できるようなシステムがある会社は、インパクトのあるイノベーションを生み出し、社会と会社の双方に正のインパクトを与えていけるでしょう。そして、そうした企業は熱狂的なファンを生み出し、差別化されたブランドを築きうると考えます。つまりは、社会課題に対して積極的にビジネスとして取り組む企業は、人による差別化を図っていける、ということです。


制作者:lanrentuku











長くなりました。続きは次回。


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