2016年12月3日土曜日

ビジネスに求められる現代奴隷への対応

前回、日本における外国人労働者の労働搾取の問題に対する海外の人権NGO/NPOの懸念について書きました。

企業のサプライチェーン上の労働問題は、現在、グローバルな課題として大きな注目を集めています。例えば英国では、「Modern Slavery Act(現代奴隷法)」が昨年策定されました。奴隷と聞いて、普通の日本人は恐らく、昔教科書で目にしたこんなイメージを思い浮かべることと思います。













そして思います。「はるか昔の話でしょ」と。しかし、強制労働や児童労働は、現代でも途上国を中心に存在しています。あるオーストラリアの人権団体が今年発表した報告書に基づけば、世界で「現代の奴隷」状態にある人の数は約4,600万人だそうです。そして、その2/3はアジア太平洋地域で抱えているとか。

この数字の信憑性は、正直私も分かりません。奴隷の定義自体、明確な訳でも無いと思いますので。しかし、奴隷状態にある方が今も世界中に多くいることは確かなようです。

さらに言えば、国連の推計では現在、世界中で約250万人が人身売買されているそうです。人身売買は一大ビジネスとなっており、ある推計では、その市場規模は全世界で年間数十億ドル規模、人身売買後の労働搾取による利益まで含めると300億ドル以上の規模にのぼるそうです。実際に、アメリカでも人身売買は大きな問題となっており、啓発・防止のためにこんなポスターも空港に貼られているそうです。


























ここで押さえておかなければならないことは、人権問題はいま世界中で大きな問題になっている、ということです。人権問題に対応する義務は国だけではなく、企業に対しても課され始めています。さらに企業は、自社内だけでなく、サプライチェーン上の人権問題への目配りも求められます。それが英国の「現代奴隷法」であり、米国カリフォルニア州の「サプラチェーン透明法」なのです。また、同様の法律がまもなくフランスでも制定されるようです。

人がいるところには必ず人権が存在します。人権問題への対応は、企業にとって、今後より高いレベルで求められることはあっても、その逆はないでしょう。つまり、企業にとって人権問題への対応は、「避けられない道」だということです。


では、これはグローバル企業だけに関係する話でしょうか?

直接的にはそうですが、間接的にはそうではありません。現在、多くのグローバル企業は、投資家やNGO/NPO、欧州の取引先などからの強いプレッシャーを受けています。人権への対応に係る調査票を受け取ったり、さらには潜入調査までされた企業も実際にあるようです。

先ほども書いた通り、グローバル企業は、自社のサプライチェーンにも適切な影響力を行使することを求められます。つまりは、取引先や下請け工場のしていることでも、もし何らかの公正でない事象があれば、それは彼らのブランドを大きく傷つけます。良くない情報は、SNS等を通じて一瞬で拡散されてしまいます。例えば昨年、電子機器に使用されるコバルトの購入を通じ、児童労働に関与しているとしてアップルやサムスンも非難を浴びました。
























グローバルに活動する大企業は今後、サプライチェーン上の人権に係る実態を調査し、事態を改善するために影響力を行使することを求められます。このことを中小企業は、十分に認識しておく必要があります。公正でない行動をとっている企業、行動を改めない企業は今後、重要な取引先を失っていくことでしょう。そしてこの風潮は今後、益々強くなることが確実です。

しかし、ここでこんなことを言う方もおられるでしょう。
それって海外の話でしょ?うちは日本で操業している企業だし、関係ないでしょ?

十分関係あります。先のオーストラリアの人権団体の調査では、日本は29万人の奴隷を抱えているとされています。堂々の25位にランクされています。何故でしょう?理由の一つは、今までこのブログでも書いてきていることです。そこはまた次回。


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