2016年11月20日日曜日

東京オリンピックを控えていまそこにある未来

前回までに、事例をあげ、以下のロジックについて説明をしてきました。ここで再度整理をしておきます。

① 少子高齢化という課題には、日本が、他国に先んじて直面している。労働力の不足は表面化してきており、こうした事実は世界でも有名である。

② 日本における「外国人労働者の問題」は、既に世界でも注目を集めている。複数の媒体を通じ、技能実習制度の運用実態が「現代版の奴隷制度」として紹介されている。

③ オリンピックやワールドカップといったメガスポーツイベントでは、今迄も開催国や開催国のスポンサー企業が、NGOやNPOの攻撃にあってきた。特に最近の大会では、人権課題に焦点があてられている。そうした状況を受け、2014年に国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市契約に差別禁止条項を追加することも決定している。
International Olympic Committee (IOC) President Thomas Bach © 2014 Reuters













④ ワールドカップを控えたカタールの建設現場における労働者の死亡事故が、世界的にも注目を集めている。そうした背景もあるなか、既に労働力が不足している日本において開催される東京オリンピックで、建設業等の労働現場に問題が生じるのではないか、という危惧が世界でなされている。

⑤ 建設業を中心に人材不足に陥ることは明らかであり、そうした状況も受け、日本政府は外国人労働者の受け入れ拡大方針を打ち出した。

ここで補足です。例えば、リクルートワークス研究所さんの調査では、東京オリンピックに絡む建設業における人材ニーズは、33.5万人に達すると予想されています。
図表 東京2020オリンピックがもたらす産業別人材ニーズ
出典:http://www.recruit.jp/news_data/release/2014/0417_7550.html


















図表 産業別人材ニーズ時系列シミュレーション(単位:人)
http://www.recruit.jp/news_data/release/2014/0417_7550.html















一方で、建設業は重層下請構造や現場依存の不十分な人材育成体制などもあり、現在の時点で既に、構造的な人材不足に喘いでいると言われています。さらには、非合法に就労している外国人も既に、かなりの数流れ込んでいると言われています。












そうした状況で生じるさらなる人材ニーズに対応すべく、日本政府が外国人労働者受け入れ拡大方針を出した訳です。しかし、外国人の人材市場をいくらか拡大したところで、まずは16.7万人が不足するサービス業のほうに人が流れるのではないでしょうか?

そうなると建設業では何が起こるか?普通に考えて想定されるシナリオは以下のとおりです。
 (1) 非合法な人材調達手段により、人材を調達する。
 (2) 労働時間を拡大する(その分の手当が支払われるかは極めて怪しい)。
この2つが合わさると、既に存在する「外国人労働者の問題」の更なる深刻化、という未来図が浮かび上がってきます。

本来、こうした問題には政府がしっかりと対応すべきです。しかし、既に指摘されている技能実習制度の問題に対しても国は、監視という名目で役に立たない天下り先をさらに一つ増やしただけと言われています。正直、あまり期待出来ません。

⑥ こうした状況で海外の人権NGO/NPOは、日本における外国人労働者の搾取問題への懸念を益々強め、スポンサー企業を中心に監視の目を強めている。

こうしたロジックにより、人権NGO/NPOは既に活動を展開しています。日本の大企業(特にスポンサー企業)にとっては大きなリスクであり、人権課題への対応を急ぐ必要があります。

さらには、英国で昨年制定され、サプライチェーン上の強制労働や児童労働の問題に対応することを求めた「Modern Slavery Act 2015(英国現代奴隷法)」、さらには紛争鉱物に対する透明性を求めた米国の「ドット・フランク法」などにより、大企業は否応なく対応を求められてきています。
http://sustainablejapan.jp/quickesg/2015/11/11/forced-labor/19597















上記のような法律が適用されるのは、英国や米国で操業している大企業に限られます。しかし、こうした法律制定の動きは既に、世界中に広がってきています。つまりは、グローバルに活動する企業にはもはや「対応するしか道が無い」ということです。そして、そのためには、中小企業にも必然的に対応が求められます。その話はまた次回。

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