2016年5月29日日曜日

最強の経営戦略たるルール・メイキング

本業を通じた社会的価値と経済的価値の同時創造” のステップについて説明してきました。特に今回はステップの【⑧ 可能であれば、モデルケースやルールまで作ってしまう】について、つまりは最強の経営手段たるルール・メイキングについて、もう少し記します。

前回、オリンピックや個人情報保護といった事例を紹介し、私の考えを3つほど記しました。
① 質だけでは所詮、ルールには勝てない。
② 大義は、ルールを正当化する。
③ 日本の中小企業も、もはやルールと無縁ではいられない。


まさに、前回紹介した事例が、そのまま①を説明しています。
食材の質で日本は世界トップクラスです。IT技術の世界トップはアメリカです。しかし、ルールを策定したのは、いずれのケースでも、他の国・地域でした。
逆に、突出した技術を持ちながらルール・メイキングに無関心だと、標準化を求めるルールが突然策定され、技術的優位を潰されてしまう可能性すらあります。

では、ルール作りを主導する際に大きな力を発揮するのは、一体何でしょう?もちろん政治力などもあるでしょうが、必ず求められるものこそが「大義」です。
社会の変化やニーズを的確に捉え、そのルールの社会的意味を長期的観点からしっかりと説明し、世論も味方につける必要があります。いまの時代、NGOとの協力も必須です。「大義」があれば、多くの関係者を傘の下に集められます。

そして、これからの時代、中小企業も国際的なルール・メイキングの動きと無縁ではいられません。日本国内のルールでは何も問題が無くても、どこかの国で出来たルールにより、突然製品の輸出を許されなくなる事例も実際に発生しています。ある国で、食品の国際規格であるコーデックスが採用されたことで、自社の食品を販売できなくなった日本企業もあったと聞きました。


我々日本人はまず、
・ルールは常に、どこかで人の手により作られている
・ルールは人が作るものであり、その時々でどうとでもなる
・本来の目的に照らして、ルールは適宜修正すればよい
という意識を持つ必要があると思います。どうも、ルールを絶対視してしまう悪い癖が、私も含め、日本人にはあるのではないでしょうか?

昔、少しだけ外国人のマネジメントに関与していたときの経験です。「これは、ルールのここに記載があるからダメだ」と私が説明したところ、猛烈な反発を受けました。「何言ってんだお前は!ナンセンスだ!!」と。彼の言い分では、「目的と実態に照らし、ルールの妥当性も含めて最適解を考えることこそがマネジメントだ。お前はマネジメントを放棄している!」とのことでした。今振り返れば、ごもっともな意見だったと思います。

お前はマネジメントを放棄している!!












例えば、いわゆる自動掃除機の技術は、日本ではルンバの発売よりももっと早くに開発されていたと聞きました。しかし、現状のルールに照らした際のリスクを怖れ、商品化されなかったとか。一方の欧米では、社会のニーズがそれを求めているのであれば大義は立つと考え、新しい商品に当然ながら伴うリスクはちゃっかりと新しいルールでマネジメントし、とっとと商品化してしまいます。Googleなど、その最たる企業ではないかと思います。我々日本人にも、こういった発想が必要なのではないでしょうか。

リスクはルールで回避しちゃえ!












特に、解決されていない社会課題の周りは、ルールが整備されていないことだらけです。自動運転やAIなど、これから将来性が期待される市場のルール化も、まさにこれからです。例えば、ある海外の有識者は「自動運転が当たり前になれば人間が運転することのほうが圧倒的に危険なので、人間による運転を禁止するルールがいずれ制定されるかもしれない」と言っていました。そうなれば、180度の価値観の転換となります。ルールこそが企業の将来を左右しかねない、まさにそんな時代が来ています。そしてそのためには、中小企業であっても、社会の動向や社会課題にしっかりと感度を高く保ち、それを「大義」に掲げて積極的に動いていく必要があります。私が言っている「社格の高い中小企業」という提案と、今回取り上げた「ルール・メイキング」の重要性とがなんら矛盾しないことが、分かって頂けたのではないでしょうか。


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